日本人のマナーのよさは「特異」?〜中国人に学ぶべきバイタリティ


日本経営管理教育協会が見る中国 第134回−安藤充(日本経営管理教育協会会員)

  私は、少しでも中国の街の動向を肌で知るために、中国出張における移動は必ず公共交通機関を利用する。このため、上海へ出掛けた時、あるいは上海で飛行機から鉄道やバスに乗り継ぐ際には、必ず上海の地下鉄を利用している。

  上海万博を機に、「先下后上(降りる人が先、乗る人は後)」「排隊候車(並んで電車を待つ)」、「有序上車(順序良く乗る)」等のマナーアップ向上の活動を盛んに展開していたが、その効果は少ないように思える。

「先下后上」も関係なし

  「人民広場」駅にて地下鉄を乗り換えることが多いのであるが、通勤時間帯に乗り換える場合には、大きなスーツケースを持って乗り降りをするため大変苦労することが多い。

  電車が駅に着くと、乗車口に我先にと乗車待ちの客が殺到する。ドアが開くと、降りる人がいるにもかかわらず、アッと言う間に乗車する客が電車内に流れ込んでくる。「下車!(降ります)」と叫んでも、お構いなし。やむなく実力行使にでるしかなく、スーツケースを前面に押し出し、飛び込んでくる乗客に向かって突進しながら降りるしかない。

中国人にとって「日本のラッシュは興味深い」

  以前、日本を訪れた中国人の知人から「東京のラッシュで、一番混雑している場所と時間を教えて」と頼まれたことがある。

  一体、何に興味を惹かれているのかと思えば、(1)誰に言われるまでもなく、きちんと整列して列車が来る事を待つ。もちろん、列に割り込みをする人はいない。(2)降りる人が先に降りた後に、電車に乗る。(3)電車の中では、携帯電話を使い大きな声で話しをするわけでもなく、多くの乗客が静かに乗っている、ということらしい。

今の日本に欠けている「バイタリティ」かも

  中国のGDPは、日本を抜いて世界第2位の経済的地位をすでに手にしている。しかしながら、一方で一人当たり平均GDPを見ると、世界の貧困国100位前後に入ってしまうのである。

  つまり、一人一人はまだまだ満たされていない状況にあり、そのため、他人よりも一歩でも前に出なければ遅れを取ってしまうのである。

  「2位じゃだめですか」と開き直って2位に甘んじるような精神では、世界で戦えないのである。何事にも貪欲に突き進み戦いに勝とうとする精神は、今の日本全体に欠けているものでは無いだろうか。

日本人自らが知るべき「日本人の特性」

  日本人の「乗降マナー」のよさは、太平洋戦争後の混乱期に、交通事業者とお客の双方の努力が農耕民族故の協調性とあいまって築き上げられた。

  この「乗車マナー」に従って行動するのは、日本人は集団における協調性を大切にする教育を子供の頃から受け、周囲との「軋轢」を避けることが自分に有利であり、自分だけが突出した行動を起こさないよう、自制心が働いていると考えられる。

  中国人が、わざわざ見てみたいと思うように、この日本人の行動や考え方は世界的にも「特異」なものなのである。この価値観を大事にする必要はあると思うが、この尺度を持って、中国のマナーを論じてはいけないのである。

  写真は上海地下鉄のホーム。(執筆者:安藤充・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)

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